Clinical prediction ruleを取り扱った報告について①

 これまでいくつかの評価尺度の予測性能について記載してきたが、その中で何度かClinical predicition rule(CPR:臨床予測ルール)を取り上げた。今回はCPRを取り扱った文献についてまとめたい。

 

まず、CPRの定義から確認する。

「臨床において病歴、身体診察、検査結果などの複数の因子から、患者の診断、予後または治療への反応に与える影響を定量化し、医師や患者の意思決定をサポートするツール」と定義されている。

CPRは以下の3つに分類することができる。

・Diagnostic clinical prediction rule(DCPR)  診断CPR

・Prognostic clinical prediciton rule(PCPR)  予後CPR

・Intrventional clinical prediciton rule(ICPR)  介入CPR

CPRは数式として表せ、入手した情報を代入することで診断、転帰の確率を算出可能となる

つまり、すでに報告されているCPRが存在している場合には、その報告に使用されている因子のデータを得ることで、データに基づき、理論上、誰でも再現可能な技術にしているものであるといえる。

経験の浅い者にとって、予後、治療の反応性を予測することは困難であり、CPRを使用することでリハビリテーションの標準化につながると思われる。

 

CPRはリハビリテーションの標準化に寄与すると思われるが、すでに報告されているCPRをそのまま臨床場面で使用してもよいのだろうか。CPRを取り扱った論文、使用可能性の判断についてまとめていきたい。

 

CPRは以下の3つの過程を踏むことで臨床での使用が可能となる。

①開発

②検証

③影響分析

それぞれを具体的に見ていこう。

 

①開発

CPRを開発するためには、ランダム化比較試験、後ろ向き研究、横断研究などのさまざまな研究デザインを使用することができるが理学療法領域では前向き研究を使用することが多いようである。

関心のあるアウトカムを設定し、潜在的予後因子のリストを作成する。このリストには病歴、身体診察、基本的な臨床検査の項目が含まれている。

続いて、臨床予測因子に関する患者の状態、関心のあるアウトカムに関する各患者の状態がどうかを判断する。

統計的解析にはロジスティックス回帰に基づいて実施される。

そのほかには判別解析、再起分割解析、ニューララルネットワークが用いられているようである。

 

②検証

開発されたCPRが別の対象にどの程度当てはまるかを測定する。この段階では予測変数が偶然や研究デザインによるものでも、派生した研究で利用される患者や設定に固有のものでもないことを確認する。

検証は内的検証と外的検証に分けられる。

内的検証:集団Aで得られた情報で作成したCPRを集団Aで検証する。

外的検証:集団B、その他の地域でも使用できるかを確認する。

内的検証のみでは集団Aに特化したといえるが、外部の集団に当てはまるかは不明である。

 

③影響分析

ルールが臨床診療に与える影響を決定する。影響には医療者の行動を変え、患者ケア、アウトカム、コスト削減などに変化を与えるかを分析する。分析に使用される研究デザインにはランダム化比較試験、前後比較などの介入試験が使用される。

これにより医療者の行動変更、患者ケア、アウトカムの改善、コスト削減などが認められた場合、実臨床で利用することが可能となる。

 

これらの過程をまとめると以下のようになる。

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参考文献から筆者作成

 

CPRが実臨床で使用できるかのエビデンスを評価するにあたって参考にできるエビデンスの階層が以下のように示されている。

 

レベル1

少なくとも1度は開発段階とは無関係の集団において検証され、なおかつ有益な結果を伴う臨床医の行動変容を示す影響分析が1度は実施されている。

臨床医はそのルールが自分の行動を変え、患者の意思決定を促し、患者アウトカムを改善し、コストを減らすという確信をもって様々なセッティングでルールを使用できる。

レベル2

広範な患者や臨床医を組み込んだ1件の大規模な前向き多施設研究で精度をしめされたか、もしくはより小規模な複数の異なるセッティングにて検証されているか、研究スタッフではなく臨床データベースを使用するのではなく、臨床医によって適用されている。

影響分析が存在しない場合、臨床医は革新をもって様々なセッティングでルールを使用できるが、患者アウトカムの改善については確信が持てない。

レベル3

1件の協議の前向きサンプルにて検証されている。

臨床予測ルールの使用には慎重に期すべきであり、研究対象患者が自身の臨床セッティングの患者に類似している場合のみ臨床予測ルール使用すべきである。

レベル4

開発されたが、検証されていないか、あるいは分割サンプル、大規模は後ろ向きデータベース、あるいは統計的手法によって検証されているか。

臨床予測ルールを臨床的に適用する前にさらなる検証が必要。

 

CPRは経験有無にかかわらず、臨床上有用な情報を提供するが、実臨床で使用する場合には以上のようにどのレベルまで検証されているかを確認する必要がある。CRPの質が低い場合は使用できないとわかるケースも存在しているようである。

 

 

具体的に、CPRが報告した論文の質を評価する(批判的吟味)にはどうすればよいのか。

以下のようなレポーティングガイドラインやチェックリストを使用することが望ましい。

  • Transparent reporting of a multivariable predicion model of individual prognosis or diagnosis(TRIPOD)

下記、URLのTRANSLATIONから日本語版がダウンロードできる
https://www.tripod-statement.org/TRIPOD/Translation-Policy

22項目のチェック項目からなりすべてのチェックは難しいかもしれないため、以下のようなチェックポイントに絞って簡単に論文を読む方法も存在しているようである。

T:types of study(研究の型)

R:research objecruves(研究の目的)

I :index rule (研究するルール)

P:participaints(参加者)

O:outcome (アウトカム)

D:diagnosis/prognostic perfomance measures(性能指標)

 

 

  • Clinical Prediction Rules: A Physical Therapy Reference Manualに記載されている方法

 

次回は批判的吟味に関する内容をもう少し詳しく見ていこうと思う。

参考文献は次回の記事で示そうと思う。

 

 

 

 

大腿骨近位部骨折後の基本的・手段的日常生活動作能力の推移

  大腿骨近位部骨折は高齢者の代表的な骨折であり、臨床場面で対応することの多い疾患でもある。日常生活動作能力、歩行能力の再獲得をリハビリテーションの目標とすることになるが、実際に、受傷前の日常生活動作能力を維持することができるものはどれほどの割合で存在しているであろうか。今回は大腿骨近位部骨折患者の日常生活動作能力の推移について焦点を当て、日常生活動作能力の低下を予測することが可能かを検討した報告について紹介したい。

 

 本邦における大腿骨近位部骨折患者の予後に関してSakamotoらの報告が参考になる。158の中核整形外科病院病院を対象とし、大腿骨近位部骨折患者の1年間の予後を報告している。

障害高齢者の日常生活動作自立度を評価し、術前、術後1年での変化を報告している。

結果は以下の表のようになっており、骨折後に日常生活動作が自立している者の割合が低下していることが明らかとなった。

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参考文献より筆者作成

 

特に、ランクJ(外出が可能)の割合が低下しており、骨折後は屋外での活動が困難となる者が増加する可能性が高いことが考えられる。

 

Dyerらは大腿骨近位部骨折患者の中長期的な転帰について報告した論文のレビューを実施している。

報告の内容をまとめると以下のようになる。

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参考文献から筆者作成

 

特定された研究間でのばらつきが大きいため障害の程度を定量化することはできなかったが、大腿骨近位部骨折患者の中長期的な転帰の範囲の情報を得ることができると思われる。

 

Moermanらは480名の大腿骨近位部骨折患者を1年間前向きに追跡し、IADLの変化、その影響因子について報告している。

IADLをGroningen Activity Restriction Scale(GARS)を使用し評価し、年齢、性別、AS分類、パートナーの有無、骨折前の生活状況、骨折タイプなどの潜在的因子の影響を検討している。

IADLは骨折後3ヶ月で骨折前より低下し、3ヶ月から12ヶ月の間に改善を認めたとしている。

骨折前のIADLの獲得では骨折後3ヶ月、12ヶ月でそれぞれ24%、29%の患者が骨折前の水準に改善したとしている。

IADLの低下に影響する因子として年齢、高いASA分類、施設居住、骨折前の歩行補助具の使用、在院日数、術後合併症、骨折前の高い(GRAS)が選択された。

ベースラインから3ヶ月のIADLの低下は年齢、歩行補助具の使用、在院日数が影響し、3ヶ月から12ヶ月の回復にはパートナーの有無、歩行補助具の使用が影響していた。

IADLは骨折後1年経過しても骨折前能力を再獲得するのは1/3未満であると結論している。

  

2016年にTanakaらが大腿骨近位部骨折患者の6ヶ月後のADL低下の予測を報告している。

リハビリテーション実施前のベースラインデータ、リハビリテーション実施前のベースラインデータと骨折後2週間のデータから6か月後のBathel indexの低下(骨折前の水準より低い)を示す患者の予測を試みている。

 

2つのモデルが作成され、 以下の変数が選択された。

モデル1(リハビリテーション実施前のベースラインデータ)

年齢、骨折タイプ、骨折前の自立度

モデル②(リハビリテーション実施前のベースラインデータと骨折後2週間のデータ)

術後2週間での移乗、術後2週間での歩行、年齢

いずれも中等度の予測性能を有しているとしている。

 

本邦ではさらに、梅原らが身体機能評価をもとにした長期的な報告をしており参考になる。

 

このように大腿骨近位部骨折患者においては中長期的に基本的・手段的日常生活動作能力の低下が残存する者が一定数存在しているようである。

大腿骨近位部骨折患者では中長期的に日常生活動作能力の低下を呈する可能性があり、入院中のリハビリテーションのみではなく、その後の介入の必要性を示していると思われる。特に、高齢な患者、入院中に十分な動作能力の回復が認められない患者については退院後の活動量の低下などによりさらに日常生活動作能力の低下を惹起する可能性がある。退院後に日常生活動作能力の低下が残存する患者に対しては、一定期間のさらなる介入の必要性を見極める必要があると思われる。

 

 

 Sakamoto K, Nakamura T, Hagino H, Endo N, Mori S, Muto Y, Harada A, Nakano T, Yamamoto S, Kushida K, Tomita K, Yoshimura M, Yamamoto H. Report on the Japanese Orthopaedic Association's 3-year project observing hip fractures at fixed-point hospitals. J Orthop Sci. 2006 Mar;11(2):127-34. 

Dyer SM, Crotty M, Fairhall N, Magaziner J, Beaupre LA, Cameron ID, Sherrington C; Fragility Fracture Network (FFN) Rehabilitation Research Special Interest Group. A critical review of the long-term disability outcomes following hip fracture. BMC Geriatr. 2016 Sep 2;16(1):158. 

Moerman S, Mathijssen NM, Tuinebreijer WE, Nelissen RG, Vochteloo AJ. Less than one-third of hip fracture patients return to their prefracture level of instrumental activities of daily living in a prospective cohort study of 480 patients. Geriatr Gerontol Int. 2018 Aug;18(8):1244-1248. 

 Tanaka R, Umehara T, Fujimura T, Ozawa J. Clinical Prediction Rule for Declines in Activities of Daily Living at 6 Months After Surgery for Hip Fracture Repair. Arch Phys Med Rehabil. 2016 Dec;97(12):2076-2084.

原拓也,他 大腿骨近位部骨折患者の入院中の身体機能および歩行能力から術後1年のADLを予測することは可能か?‐理学療法診断のための他施設共同前向きコホート研究‐理学療法学 2016;43(2):148‐149

脊髄損傷患者の転倒発生率とリスク要因

 前回、前々回と脊髄損傷患者の歩行能力の予後予測に関する報告を紹介した。年齢を含めた5つの神経学的検査から1年後の歩行能力を予測することが可能であるが、重症度によって予測精度が異なることがあるため今後の課題となっている。

 脊髄損傷患者は受傷後、劇的な身体状況の変化が生じ、受傷以前とは異なる身体状況で生活を送ることになる。移動可能な患者においては歩行能力、身体機能の変化、生活環境などにより、その後の転倒リスクが増加する可能性がある。高齢者、脳血管障害、パーキンソン病患者における転倒発生率、リスク要因は明らかになっているが、脊髄損傷患者ではどうであろうか。

 今回は脊髄損傷患者の転倒発生率、リスク要因、臨床的なバランス能力測定尺度の転倒予測能力を検討したシステマティックレビュー、メタ分析の報告を紹介したい。

 

 2019年に2つのシステマティックレビューとメタ分析が報告されている。1つはKhanらのものであり転倒発生率、リスク要因について報告し、Abouらの報告では臨床的なバランス能力測定尺度の転倒予測能力を報告している。

 

 Khanらは以下の基準に基づいて論文を選択し転倒発生率、リスク要因を調査している。

包含基準

1)後天的な脊髄損傷

2)18歳以上

3)転倒に関する情報(転倒した対象者の割合)、転倒に関する要因が報告されている。

除外基準

1)データが提示されていないレビュー論文

2)動物実験を取り扱った論文

3)先天性脊髄損傷(二分脊椎)

4)脊髄損傷患者のみではなく様々な健康状態の参加者が関与している研究

5)脊髄損傷の原因として転倒を調査した研究

 

以下のバイアスについて評価を実施している。

1)測定バイアス(前向き、後ろ向き)
2)サンプリングバイアス(単一施設、地域ベース、人口ベース、記載なし)

 

選択された研究は1.回復段階(入院/病院居住、地域在住)、2.移動状況(歩行/車椅子)のカテゴリに従いグループ化された。

転倒リスクとなる要因を(BBSE)モデルに従い、生物学的、社会学・行動学的、経済的、および環境の4つに分類した。

 

転倒発生率

入院 13%(95%CI 9‐17%)

 

地域在住者を対象とした場合の少なくとも1回の転倒発生率

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⊡6ヶ月間の後ろ向き研究 ■6ヶ月間の前向き研究 

△12ヶ月の後ろ向き研究 ▲12ヶ月の前向き研究

参考文献から筆者作成

 

12ヶ月の追跡期間のみを対象としたメタ分析

歩行者の転倒発生率   

78%(95%CI 73‐83% I2=0%)

車いす使用者転倒発生率 

56%(95%CI 28‐91% I2=98%)

Nelson らの研究を除外した車いす使用者の転倒発生率 

69%(95%CI 60‐76% I2=59%)

リスク要因

 

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 Abouらは以下の基準に基づいて論文を選択し臨床的なバランス能力測定尺度の転倒予測能力を報告している。

 

包含基準

1)18歳以上の歩行可能な脊髄損傷患者

2)臨床バランス尺度を使用している

3)転倒を報告している

除外基準

1)症例報告

2)実験室ベースのバランス測定を使用した研究(床反力計など)

3)脊髄損傷患者のみではなく複数の神経学的疾患患者を扱った研究

4)重複したデータ

5)後ろ向き、前向きの追跡の併用

6)二重課題を含む研究

 

Newcastle-Ottawa Quality Assessment Scale (NOQAS)を使用しバイアスリスクの評価を実施。

含まれていた研究の要約は以下のようになっていた。

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参考文献から筆者作成

 

尺度毎の平均値差

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Tined up and go test(b)は複数回転倒者と転倒者の比較

参考文献より筆者作成

 

バランス尺度の転倒予測能力

 

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参考文献より筆者作成

 

 現在までの報告では歩行可能な脊髄損傷患者は高い転倒発生率を有しており、転倒者と比較してBerg balance scale、Timed up and go testなどのバランス尺度で差が存在しているようである。Berg balance scale、Functional reach testではCut off から考えるとより高い身体機能を持っている者のほうが転倒する可能性があると識別されるようである。矛盾しているようにも思われるが、より身体機能が高い患者はより高い活動量、歩行補助具を使用しない歩行など、転倒リスクとなりえる活動を実施する機会が多いためであるとも考えられる。

 

 脊髄損傷患者の転倒においてもこれまでの報告と同様に身体機能をはじめとした内的要因に加え、外的要因がかかわっている。歩行が可能な脊髄損傷患者においてはより慎重な身体機能評価、環境評価、対象者への転倒リスクの説明、指導が必要になると思われる。

 転倒識別のための臨床バランス尺度のAUC、感度、特異度、Cut offが報告されているが、研究数が少ないこと、対象者の特徴が本邦における脊髄損傷患者と異なっていることから一般化できるかは定かではないと思われる。実際の臨床場面での使用に関しては慎重に判断する必要がある。

 

Khan A, Pujol C, Laylor M, Unic N, Pakosh M, Dawe J, Musselman KE. Falls after spinal cord injury: a systematic review and meta-analysis of incidence proportion and contributing factors. Spinal Cord. 2019 Jul;57(7):526-539.

Abou L, Ilha J, Romanini F, Rice LA. Do clinical balance measures have the ability to predict falls among ambulatory individuals with spinal cord injury? A systematic review and meta-analysis. Spinal Cord. 2019 Dec;57(12):1001-1013. 

 

 

 

外傷性脊髄損傷患者の1年後の歩行能力を予測する臨床予測ルールの外的検証

 前回は外傷性脊髄損傷患者の1年後の歩行能力を神経学的検査から予測するVan Middendorpらの報告を紹介した。報告では識別能力は良好であり、年齢を含めた神経学的検査から外傷性脊髄損傷患者の歩行能力の予測可能性が示唆されている。臨床予測ルールの作成は開発、検証、影響分析の3つに分けられ、これらの過程を得ることで臨床場面での実装が可能となる。そのため、臨床予測ルールを報告している研究があった場合にはまず、外的検証が行われているかを確認する必要がある。

 

 今回はVan Middendorpらが報告した臨床予測ルールを検証した研究をまとめてみたいと思う。

 

 これまでVan Middendorpらの報告を検証した研究は渉猟した範囲では以下の4つが挙げられる。

 

1.アメリカ Malla

2.オーストラリア  Van Sifhout 

3.カナダ Hicks (Van Middendorpらの報告した予測変数よりも簡潔なモデルも開発)

4.カナダ Phan

 

 1~3はVan Middendorpらの臨床予測ルールの外的検証を行っており、4については外的検証に加え、重症度別にみた識別能力の比較を実施している。

 

 1については入手出来なかったため2.3について報告結果をまとめてみる。 f:id:kento9554:20210120224702p:plain

 参考文献から筆者作成

 

 Van Sifhout、Hicksらの報告では使用している歩行評価が異なっているが、判別能力は良好であった。Hicksらの報告でVan Middendorp、Malla、Van SifhoutVanらの報告を比較しているので詳細は参考文献を参照していただきたい。

 Van Middendorpらはオランダの脊髄損傷センターの患者を対象とし臨床予測ルールを作成したが、アメリカ、オーストラリア、カナダでも同程度の識別能力を有しおり、外的妥当性が確保されていることが示された。このため、アメリカ、オーストラリア、カナダでも Middendorpらが開発した臨床予測ルールを使用することが可能であることが明らかとなった。

 

  PhanらはVan Middendorp、Malla、 Van Sifhout、Hicksらの報告から重度~軽度の脊髄損傷患者を対象として検証していることに注目し、重症度によるバイアスの影響を検討している。AISB+Cの患者はAISA+Dの患者と比較し予測精度は低く、これまでのモデルはサンプリングバイアスによって高い予測精度を達成していると仮説し、検証している。

 

 Hicksらの報告と同様にカナダの脊髄損傷センターの患者を対象としVan Middendorpらの5つの予測変数を適用した。

 

重症度毎(AISA・B・C・D)、AISA+D、AISB+Cについて個別に臨床予測ルールのスコアを計算し、識別能力を検討している。

 

重症度別にスコアを視覚的に確認すると、明確なサンプリングバイアスが確認され、識別能力に関しては以下の表のようになっていた

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参考文献から筆者作成

 Phanらはこの結果から予測モデルがすべての重症度の外傷性脊髄損傷患者を単一のコホートとすることで誤って高い予測精度を達成したことを示唆しているとした。

 

 Van Middendorpらの開発した臨床予測ルールは外傷性脊髄損傷患者の歩行能力を予測するのに有用であるが、重症度別にみると、予測の正確性が異なっていることが明らかになった。有用であると思われる予測モデルであってもその予測性には限界があるようである。報告された予測モデルを臨床場面で使用する際には外的検証が行われているかを確認し、予測性にも限界があることを理解した上で使用することが重要である。

 

本邦では古関らが、同様の手法を用いて脊髄不全損傷患者の歩行能力予測を試みているので参考になる。

 

van Silfhout L, Peters AE, Graco M, Schembri R, Nunn AK, Berlowitz DJ. Validation of the Dutch clinical prediction rule for ambulation outcomes in an inpatient setting following traumatic spinal cord injury. Spinal Cord. 2016 Aug;54(8):614-8. 

Hicks KE, Zhao Y, Fallah N, Rivers CS, Noonan VK, Plashkes T, Wai EK, Roffey DM, Tsai EC, Paquet J, Attabib N, Marion T, Ahn H, Phan P; RHSCIR Network. A simplified clinical prediction rule for prognosticating independent walking after spinal cord injury: a prospective study from a Canadian multicenter spinal cord injury registry. Spine J. 2017 Oct;17(10):1383-1392.

Phan P, Budhram B, Zhang Q, Rivers CS, Noonan VK, Plashkes T, Wai EK, Paquet J, Roffey DM, Tsai E, Fallah N. Highlighting discrepancies in walking prediction accuracy for patients with traumatic spinal cord injury: an evaluation of validated prediction models using a Canadian Multicenter Spinal Cord Injury Registry. Spine J. 2019 Apr;19(4):703-710. 

古関一則,他 脊髄不全損傷者の歩行能力の予後予測に関する研究‐リハビリテーション病院における後方視的検討‐ 理学療法学 2015;42(3):271~279

外傷性脊髄損傷患者の1年後の歩行能力を神経学的検査から予測することは可能か

 脊髄損傷は脳血管障害と並び、リハビリテーション職が大きくかかわる疾病である。脊髄損傷の発生頻度は1990~1992年の全国的な調査で人口100万人当たり年間40.2名と報告されている。地域での調査では人口100万人あたり30~40人、120~130人と地域差が激しい。また近年の高齢化に伴い、受傷時年齢の高齢化が明らかになっている。

 

 脊髄損傷患者におけるAmerican Spinal Injury Associattion Impariment Scale(AIS)の変化ではMarinoらが入院時Aの場合は退院時または1年後にB-Dと不全麻痺に変化するのは約10~15%でDまで変化するのは約2%、入院時Bの場合約1/3がCに1/3がDに1年後変化し、AIS Cの場合は1年後に2/3がDに変化すると述べている。

 

 1年間の経過を見ても、神経学的な回復は得られず、機能障害、能力低下が残存することが予測される。脊髄損傷患者においてはリハビリテーションの期間が長期化することが予測されるが、昨今の在院日数の短縮により同一の病院でリハビリテーションを完結することはなくなり、急性期、回復期、維持期にわたる連携したリハビリテーションの提供が重要となっている。脊髄損傷後には大きな身体状況の変化が生じ、身体状況に合わせた生活の再構築が円滑に行えるように介入を提供する必要がある。特に移動の可否については住環境、活動範囲などに大きな影響を与え、早期から情報提供を行い、問題点に対しての介入、提案などを実施する必要がある。

 

今回は脊髄損傷患者の歩行獲得の予測を検討した報告を紹介したい。

 

2011年のvan Middendorpらの報告である。

 

研究タイプ

 前向きコホート研究

 

研究目的

脊髄損傷患者の自立歩行を予測する臨床予測ルールを作成すること

 

包含基準

European Multicenter Study on Human Spinal Cord Injury (EM-SCI)に登録された急性外傷性脊髄損傷(脊髄円錐、馬尾損傷を含む)により入院した18歳以上の成人

 

除外基準

 認知障害により身体検査に協力できなかった者、末梢神経病変、多発神経障害の既往がある者、損傷後15日以内に完全な神経学的評価がない者は除外

 

情報収集

年齢(65歳≧、<65歳)

International standards for classification of spinal cord injuriesに準じた神経学的検査(運動スコア、Lighat touch sensory〔LTS〕、pinprick sensory〔PPS〕 )

AIS

1年後の歩行能力(Spinal Cord Independence Measure item移動項目、0~3:自立歩行不可、4~8:自立歩行可能、歩行距離項目、屋外歩行項目)

 

受傷後15日以内、1か月後、3か月後、6か月後、12か月後に情報収集

リハビリテーション内容については個別に調整され強度は異なっていた。

1年後の測定が実施できていない場合は6ヶ月後の測定結果が使用された。

SCIMを評価した医師、理学療法士作業療法士は神経学的検査結果について盲検されていなかった。


追跡期間

 受傷後1年間

 

解析

最大7つの予測変数を持つすべてのロジスティックス回帰モデルが評価されるモデル検索を適用。

モデルごとにAIC赤池情報量基準)を算出、適合度を評価。

同等の性能を示した場合、含まれる変数の数と、臨床場面での使いやすさに基づいて、最適なモデルを選択。

各予測ルールの性能をROC曲線下面積(AUC)から識別能力を判断。

予測の較正は予測された確率に対し記録された頻度をプロットすることによって視覚的に評価。

PPSスコアの潜在的な追加予測値、検査のタイミング(≦24時間、<72時間、<損傷後15日)、損傷レベル(四肢麻痺または対麻痺)を追加し補助的な分析を実施。

新しい予測ルールのAUCとAISのAUCと比較

カッパ係数(κ)を使用し、SCIM屋内移動の結果と中等度の距離、屋外移動の結果の一致を計算。

2008~2009年の間にEM-SCIネットワークに含まれた外傷性脊髄損傷患者(検証群)を対象に予測ルールの性能を評価。

 

結果

 

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参考文献から筆者作成

 

 対象者と除外された者の臨床的特徴は同様であった。

 1年間の追跡測定が完了した対象者と6ヶ月間の追跡測定を実施した者、追跡測定が実施できなかった者の臨床的特徴は同様であった。

 

ロジスティックス回帰分析の後、年齢と4つの神経学的予測因子からなる11の異なるモデルが歩行能力と有意に関連していた。

最終モデルは、使用の単純さに基づき選択され、年齢(65歳で2分)、4つの神経学的予測因子(大腿四頭筋筋力〔L3〕、腓腹筋筋力(S1)、L3・S1でのLTS)が含まれていた。

1年後の独立して歩行できる確率を最終予測ルールの重みづけ係数を使用して推定(最少スコアー10、最大スコア40)。

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参考文献から筆者作成

 

作成されたモデルは自立歩行可能であった者と不可能であった患者を良好に区別可能であった(AUC 0.956, 95%CI 0.936-0.976)

 

予測ルールの較正の視覚化については参考文献を参照していただきたい。

 

補助分析では損傷レベル、検査タイミングは自立歩行の予測に対し有意な付加価値がないことが示された。

 

腰髄、仙髄領域のPPSスコアを最終モデルに追加しても適合度は改善しなかった。

L5PPSスコアを追加した場合のモデルのAUCは、この変数を使用しない予測ルールよりもわずかに高かった。

 

予測ルールの精度はAISの精度よりも大幅に高かった。

 

検証群の予測ルールの識別能力は良好であった。

 

 外傷性脊髄損傷患者の1年後の歩行能力の予測を報告した研究である。今回、開発された予測ルールに関してはその識別能力は良好であり、内的検証群においても同程度の結果が得られていることから妥当性は確保されていると思われる。脊髄損傷患者における神経学的検査から1年後の歩行能力を予測を実施することができる可能性が高いようである。受診時の情報、初期評価などから歩行能力の獲得確率を予測することは、治療・介入方法を検討する指針となりえるのではないだろうか。

 

 

van Middendorp JJ, Hosman AJ, Donders AR, Pouw MH, Ditunno JF Jr, Curt A, Geurts AC, Van de Meent H; EM-SCI Study Group. A clinical prediction rule for ambulation outcomes after traumatic spinal cord injury: a longitudinal cohort study. Lancet. 2011 Mar 19;377(9770):1004-10

古澤一成, 脊髄損傷のリハビリテーション医療総論‐本邦の脊髄損傷の特徴を生かしたリハビリテーション‐ Jpn J Rehabil Med 2019;56:524-530

横山修, 脊髄損傷のリハビリテーション医療における帰結予測 Jpn J Rehabil Med 2019;56:537‐540

 

 

評価結果の重要な変化に関する指標

前回、前々回の記事では変形性関節症患者のMinimal detectable change(MDC:最小可検変化量)とMinimally clinically important differences (MCID:最小限の臨床的に重要な差)を紹介した。今回はMDC、MCIDと評価の変化についての指標についてまとめたい。

 

まずは用語の意味からまとめてみる。また関連した用語も確認する。

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                             参考文献から著者作成

 

それではSDD、MDCから確認していく。

評価、測定を実施し得られた結果には真の値と誤差が含まれている。誤差は偶然誤差と系統誤差の2つに大別され、さらに偶然誤差は個体差、測定誤差に、系統誤差は固定誤差、比例誤差に分けられる。

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                             参考文献から筆者作成

 

 SDD、MDCは測定誤差を示す指標となる。

SDDはBland and Altman’ limits of agreement法から計算され、MDCは測定の標準誤差(Standard Error of Measurement:SEM)から計算される。MDCの計算は以下のように行う。

 

SEM=SD×√(1-r)(r 信頼性係数)

MDC=1.96×√2×SEM

 

またSEMに関しても測定誤差の指標として用いられることがある。

 

SDD、MDCは測定における誤差を超える最小の検出可能な数値であり、これらより小さい変化は測定誤差範囲であることを意味している。

 

続いてMCIDについて確認する。

MCIDはJaeschkeらにより提唱された概念であり、治療前後の患者における変化が有益(有害)であると解釈できる最小の変化・差を示している。

 治療効果を検討する場合には無作為化比較試験を実施する。無作為化比較試験の主な目的は、治療群間の結果に統計的に有意な差があることを示すことである。ただし、統計的有意性は、必ずしも臨床的な有意性または臨床的な重要性、つまり観察された改善が患者にとって意味があるかどうかを示しているわけではない。

 

そのためRCTで研究されていた治療・介入が臨床的に重要な利益を生み出しているのか判断する必要がある。

その方法としてKatzらは以下のような方法を提案している。

 

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1つ目の方法は変化の大きさが関連する治療集団において臨床的に重要であるかを判断することである。特定の状態の治療を評価する臨床試験データを収集し(1.a)、これらのデータ分析を実施し、どの程度の変化が臨床的に重要であるとみなされるかを判断することとなる。

2つ目の方法は、1つ目の方法で決定された変化の基準を使用して、治療が重要な変化をもたらしたかを判断する。例えば、治療後にVASで30mmの痛みが減少したOA患者は、臨床的に重要な反応(1つ目の方法)があるとみなされる。つまり、患者を治療への反応者と見なす。次に、治療が臨床的に意味のある影響をもたらすかどうかは、対照と比較した治療に対する「反応者」の割合を比較することによって決定される。

 

このような判断に使用される指標がMCIDである。

 

MIDCは以下のような方法で算出される。

① アンカーを用いた算出方法(Anchor based method)

アンカー(外部の独立した有効な基準)と比較してMCID

を決定する方法である。

アンカーはわかりやすく、直感的な解釈ができるようなものがよいとされている。これらのアンカーにはPatient global impression of change(PGIC)、推移評価、Patient global assessment(PGA)が挙げられる。

具体的には1.とても改善した、2.改善した、3.変化なし、4.悪化した、5.とても悪化したなどが用いられている。

 

上記のアンカー質問から治療を受けた患者をとても改善した~とても悪化したの5群に分ける。

そこで、2.改善した群と3.変化なし群の治療前後における尺度の変化に注目しその変化値を求める。

そして最も感度、特異度が高くなるようなカットオフ値をROC曲線用いて計算した値がMCIDとなる。

 

② 分布に基づいた算出方法(Distibutipn based method)

前述したMDC、SMEをMCIDとして用いる方法である。

 

また、これ以外にも専門家からコンセンサスを得ることからMCIDを決定することができるようである。

 

CIDについて確認する。

 MCIDは改善が最小の患者の回答(2.改善した)に基づいているが、CIDでは改善が大きい患者の回答(1.とても改善した)に基づき計算される。

 CIDを検討した研究ではMCIDを最小の改善と回答した患者の平均変化と定義し、CIDを改善が大きいと回答した患者の平均変化と定義することで算出しているようである。

 

MCIDの2つの算出方法をまとめたが、以下のような問題点が存在している。

①アンカーを用いた算出方法(Anchor based method)

  • アンカーの妥当性の基準がない
  • MCIDの計算はアンカーの種類によって依存する場合がある
  • 群分けの方法に基準がない
  • 想起バイアスが入りやすい
  • 算出された値が測定誤差範囲内である可能性がある

②分布に基づいた算出方法(Distibutipn based method)

  • 臨床的な解釈が加味されていない
  • CIDの算出はできない
  • 変化が測定誤差によるものではないこと示している

以上のような問題点を解決するため、①と②の方法を組み合わせた方法でMCIDを算出する方法も存在しているようである。

 

MDC、MCID、CIDの関係性から治療の成功・失敗については以下のように表すことができる。

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患者① 治療が成功とみなされる(変化がCIDより大きい)
患者② 治療がわずかに成功(変化がMCIDより大きく、CIDより小さい)

患者③ 治療が失敗(変化がMDCより小さい)

                             参考文献から筆者作成

 

治療・介入方法、その有益性を判断するには以上のような指標を使用することが有用である。MCIDを臨床に適応する際の注意点をまとめる。

 

MCID算出に影響を与える要因

  • 異なる尺度で測定された変化は異なるMCIDを算出する
  • 臨床試験の有効性はさまざまな要因(母集団の特性、試験データ)の影響を受ける

MCIDに影響を与える要因

  • MCIDを算出するために使用された方法(アンカー、ROC、分布)
  • 使用されたアンカーの種類
  • 改善の定義
  • 疾患の種類や重症度などの集団の特徴(ベースライン時の特徴)

臨床試験データを利用する際の注意点

  • 特定の尺度に適したMCIDを見つけるか、算出する必要がある
  • グループの変化ではなく、個人の変更に適用する必要がある

 

American Academy of Orthopeaedic Surgeonsのガイドラインでは平均疼痛変化の95%CIとMCIIの関係から治療の有効性を示している。興味があるかたは確認していただきたい。

 

リハビリテーション領域でもMDC、MCIDの報告がされており、このような指標を用いた治療・介入方法の選択、有効性の判断が進むことになると思われる。実際の対象者の特徴、実施しようとする治療・介入内容などを考慮しMCIDを選択、使用する必要がある。

 

参考文献

Katz NP, Paillard FC, Ekman E. Determining the clinical importance of treatment benefits for interventions for painful orthopedic conditions. J Orthop Surg Res. 2015 Feb 3;10:24. 

下井俊典,評価の絶対信頼性,理学療法科学,2011;26,3:451-461

有馬秀幸,他 Minimal Clinically Important Difference(MCID)の概念と算出方法,臨床整形外科,2019;54:190-195

宮崎貴久子,QOL評価の臨床的意味:Minimally Important Difference(臨床における最小重要差:MID),行動医学研究,2015;21,1:8-11

Guralnik J, Bandeen-Roche K, Bhasin SAR, Eremenco S, Landi F, Muscedere J, Perera S, Reginster JY, Woodhouse L, Vellas B. Clinically Meaningful Change for Physical Performance: Perspectives of the ICFSR Task Force. J Frailty Aging. 2020;9(1):9-13.

変形性膝関節症・股関節症患者の患者立脚型アウトカムの最小限の臨床的に重要な差

 前回は変形性膝関節症患者におけるTUGの最小可検変化量について記載した。臨床場面ではTUGのような客観的な指標を用いた評価に加え、患者自身主観的な満足度、QOLを考慮した患者立脚型アウトカムを使用する。客観的な指標の改善を目標とすることも重要であると思われるが、患者自身が満足することができるような介入方法を検討することはさらに重要であると思われる。

 変形性関節症患者を対象とした患者立脚型アウトカムには以下のようなものが挙げられる。

変形性膝関節症

  • Japanese Knee Osteoarthritis Measure(JKOM)
  • Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)
  • Knee injury and Osteoarthritis Outcome Score(KOOS)
  • Knee Society Knee Scoring System(KSS)

変形性股関節症

  • Japanese Orthopaedic Association
  • Hip-Disease Evaluation Questionnaire
  • Oxford hip スコア

 

 以上のような患者立脚型アウトカムにおいて重要な変化、改善と判断するのにはどの程度の変化があればよいのであろうか。今回は変形性膝関節症・股関節症患者における最小限の臨床的に重要な差についての報告を紹介したい。

 

2001年Angstらの報告である。

 

研究タイプ

前向きコホート研究

 

研究目的

 変形性関節症患者のWOMAC、SF-36の統計的に検出可能な最小差(SDD)と臨床的最小重要差(MICD)を明らかにし、サンプルサイズによる影響を調査すること

 

包含基準

米国リウマチ学会によって定義された、変形性膝関節症患者。

 

除外基準

米国リウマチ学会の基準をみたしていない

薬物乱用の既往

薬物療法の遵守性の低いもの

質問票への記入が困難である者

人工関節置換術を受けたもの

 

情報収集

WOMAC(0‐10)

SF-36(0‐100)

 

追跡期間

ベースライン検査から3か月後

(3~4週間は 理学療法士による包括的入院リハビリテーションプログラムを受ける)

 

解析

応答性尺度としてEffect size(ES)、standarized response mean(SRM)を算出

3カ月前の変形性関節症に関連する一般的な健康状態に関してはるかに悪い、わずかに悪い、等しい、わずかに良い、はるかに良いの5つのアンカー分類から変化を聴取

改善のMCID:等しい‐わずかに良いの平均スコア差から決定

悪化のMCID:等しい‐わずかに悪いの平均スコア差から決定

 

結果

 142名の変形性関節症患者が研究の対象となった。

 

 変形性膝関節・股関節症患者の入院リハビリテーション効果

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                            参考文献から筆者作成

 

3カ月前の変形性関節症に関連する一般的な健康状態への回答から得られた平均効果

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                                                                                                         参考文献から筆者作成

 

パイロット研究のデータが与えられた場合の統計的に検出可能な最小差とサンプルサイズ

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                              参考文献から筆者作成

  患者立脚型アウトカムにおける最小限の臨床的な重要な差を明らかにした報告である。最小限の臨床的な重要な差(MCID)を明らかにすることでその治療が患者に臨床的に意味のある効果を与えたかを判断することのできるツールとして利用することができる。今回の研究ではWOMACで0.67~0.75の改善を認める場合には治療が患者にとって意味のある効果を与えたと判断することができるようである。

 

評価の変化の指標を取り上げた。前回・取り上げたMDC、MICDのほかにも類似した指標があり、内容をまとめたいと思う。

 

 

Angst F, Aeschlimann A, Stucki G. Smallest detectable and minimal clinically important differences of rehabilitation intervention with their implications for required sample sizes using WOMAC and SF-36 quality of life measurement instruments in patients with osteoarthritis of the lower extremities. Arthritis Rheum. 2001 Aug;45(4):384-91.

津田英一 , 変形性膝関節症のリハビリテーションに必要な評価法と活用法 Jpn  J Rehabil Med 2017;54:854-859

高窪祐弥,他 変形性股関節症リハビリテーションに必須の評価法と活用法 Jpn  J Rehabil Med 2017;54:849-853